大阪桐蔭 藤原恭大の魅力とは|本能でダイヤモンドを激走する姿に視線釘付け

なぜ大阪桐蔭の藤原恭大は人を惹きつけるのか

バッターボックスに立つその姿、彫刻のように浮き上がる筋肉。投手に向けたそのまなざし。

放たれた打球が外野に飛べば、ダイヤモンドを1塁、2塁、そして3塁へと駆ける。50m 5秒7。

彼の激走するその姿に、我々の視線は奪われる。

小学校時代、鬼ごっこは誰も追いつけなかった

小さいころの藤原はとにかく足が速かったという。

当時の担任の先生は「小学3年生の頃に鬼ごっこをしていて他の子にタッチするのはいつでもできたが、藤原君には大人が本気で走らないと追いつけなかったんです。本気で走ったら藤原君も本気で走って結局、追いつけずでした(笑)」(かみじょうさんのコラムから)と語っているという。


秋、右膝の故障が襲う

2017年10月、藤原は持ち味である足(右ひざ)を故障した。

当時、大阪桐蔭の西谷監督はスポーツ紙への取材に対して

「(藤原恭大のケガは)報告を受けていなかった。隠してやっていたので僕はケガをしているのを知らなかった。神宮大会の最後の試合のときにちょっと動きが悪かったので聞いたらそういうことだった。それから休ませるようにしています。」(東スポから)と当時を語る。

センバツ前、故障が完治せずに焦り

大阪桐蔭は近畿大会で優勝し、事実上、選抜甲子園への出場を決めていた。足が持ち味の藤原は焦りを覚えていた。選抜開幕前の関西学院戦では、いためた右膝が完治せずに先発メンバーから外れた。

当時、藤原は「センバツまでにどれだけ(右膝の)状態を上げていけるか。MAXまではいけない。7、8割でどれだけできるかだと思う」と語っていた。

そして、選抜の直前の3月、大阪桐蔭は沖縄の招待試合に招かれた。そこでも、藤原は焦りを語っている。

「走るにしても、投げるにしても7,8割しかできない。MAXでできないのが、すごくふがいないというか情けない。これほど長引くとは思わなかった。3ヶ月ぐらいは思い切り走れていない。走れないのが一番、痛い。結構、焦っています。」

選抜で「MAX」復活

いよいよ選抜甲子園が開幕。初戦は21世紀枠の伊万里高校。

そこで、西谷監督が明言した。「藤原を先発で起用する。」 

選抜での藤原は水を得た魚のように、聖地で躍動した。まさに「本能」、二塁ベースには痛めた右足でスライディングをして周囲をヒヤっとさせるような激走。 「走塁は8割ぐらいの力。反射的にやってしまった」と語った。

西谷監督は藤原の状態について「上がってはきているけど、まだ僕が望む藤原の状態ではない。ここから勝ち上がるには藤原の打撃がポイントになる」とキーマンに藤原をあげた。その藤原は「ひざの痛みはなくなってきた。暴れたい」と取材陣にコメント。

そして、三重戦では、キーマンとされた藤原が延長12回裏に劇的なサヨナラ打を放つ活躍を見せた。チームは勢いそのままに選抜甲子園で優勝、2連覇の偉業を達成した。

これにはプロ野球界も絶賛。阪神幹部は藤原について「ポジションにこだわらなければ、今年の高校生野手で一番の素材。走攻守三拍子を持ち合わせる好選手。2~3年後には間違いなく主力になれる力を持っている」と高く評価した。


春季大阪大会でベンチを外れる

選抜が終わり、春季大阪大会が始まった。

衝撃が走った。

ベンチ入りメンバーから藤原とエース柿木蓮が外れた。

西谷監督は「新しい血が必要なので大幅に入れ替えました」と意図を説明。

藤原については「練習は普通にしていますが、トレーニングを万全にして右膝の筋肉をしっかり強化していこうと思い切って外しました」と完全復活を待った。当時、藤原は草むしりなど裏方の仕事もこなしたという。

春の大阪大会で大阪桐蔭は優勝し、近畿大会へ出場。

ここで、藤原はベンチ入りメンバーに登録された。「自分では万全かな、と思う。試合に出たい感じがすごくある。もう完治していると言える状態です。ほとんど100%の動きができる。」と想いを語った。

夏の大会直前の招待試合で完全復活

夏予選前、MAXな藤原がいよいよ帰ってくる。日体大(大学)との練習試合では、エグすぎる弾丸ホームランをライトスタンドの奥の森に突き刺した、凄まじいホームランだった。

さらに、愛知と香川での招待試合で実践を積む。香川招待試合の2日間の計4試合の成績は、13打数9安打、8打点、4本塁打。完全復活、「藤原MAX」を印象づけた。

「4番 藤原」が誕生する

藤原といえば、大阪桐蔭の先頭バッター(1番)とのイメージが強い。しかし、春から西谷監督は打順のメインを4番に。

近畿大会の初戦前、西谷監督は藤原に「1番と4番、どちらがいいか?」と質問。その際、藤原は迷わず1番を選択したという。自身の武器であるバッティングと足を生かすのはやはり1番が最良だと考えてのことだ。

1番打者の魅力について藤原は「1番打者で試合が決まることが多いと思うんです。1番はチームの顔でもあるし、中学時代から1番を打ってきて自信を持ってやっていたので、自分が打てば勝てると常に思いながらやっています」と想いを語る。


唯一、苦手?なのは「インタビュー」か

夏に向けて、筋肉がまるで幽遊白書の戸愚呂のようになってきた藤原。

ついにMAX。

しかし、藤原には危機感を覚えていることが一つあった。大阪桐蔭では、その注目度からテレビ取材等も多い。

その際、主将の中川卓也や根尾昂はインタビューでの受け応えがうまいのを目にして、

藤原は「なぜか追い込まれてしまって(笑)。自分もきちんと話せるようにしないと」と自身の受け答えに対して危機感を感じると取材に応えていた。

報徳学園 小園海斗との対決が夢

いよいよ夏がやってきた。

北大阪大会の準決勝・履正社戦。1点をリードされ、9回表ツーアウトの場面で、

4番・藤原は「今までで一番緊張した。でも頭は冷静だった」とシーンで、四球を選び満塁にチャンスをひろげた。

続く5番・根尾も四球を選び、土壇場で同点とした。続く山田がタイムリーを放ち、逆転勝利。

決勝では、打線を爆発させ、甲子園出場を決めた。

甲子園で再会を望む選手がいる。報徳学園の小園海斗だ。藤原は、開幕直前のインタビューで対戦したい相手として小園の名前を挙げた。中学時代に所属したオール枚方ボーイズの元チームメートである。

「報徳と当たったら勝ちたい。やっぱり小園はライバル。競い合える選手だし、絶対に勝ちたい」と語る。

二人は、甲子園での初対決を夢見て、この夏、同じ赤色のグラブでそろえている。


全国制覇への思い「準優勝で褒められるチームではない」

北大阪大会は打率6割3分6厘、高校通算ホームラン数29本の成績をひっさげ、聖地・甲子園に降り立つ。

春夏連覇に向けて、藤原は「優勝したい。準優勝で褒められるチームではない」と。

好きな言葉はフルスイング。

この夏、藤原恭大のMAXなフルスイングと、ダイヤモンドを駆けるその激走に熱い視線が向けられる。

藤原恭大のプロフィール・出身

「腕相撲で他の部員に負けたことがない」
センター
左投左打
2000年5月6日生まれ
181cm
78kg
B型
大阪府豊中五中 / 枚方ボーイズ出身